2020年12月26日

トランプが国防法案に拒否権を行使

 military.comによれば、水曜日にドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)は議会における広範な超党派の賛成を得た法案を拒否すると脅したのに引き続いて国防法案に拒否権を行使し、政権初の拒否権を覆すための投票を準備する可能性があります。

 法案は兵士の3%の昇給を認め、軍の計画と建設に 7400億ドル以上を承認します。

 拒否権を発するずっと前、トランプは拒否をする一連の理由を示しました。彼に対する偏見を抱くと彼が主張するソーシャルメディア企業に制約を与え、南部連合の指揮官を讃えたフォート・ベニング(Fort Benning)とフォート・フッド(Fort Hood)のような軍事基地の改名を認める文言を削除するよう、彼は議員たちに求めました。詳細には立ち入らず、彼は国防法案の最大の勝者は中国だと主張しています。

 下院へのビデオメッセージの中で、トランプはこれらの異議をあげ、重要な国家安全保障の手法を欠く法案で、退役軍人と我が軍の歴史を尊重しない規程を含み、国家安全保障と外交政策においてアメリカを第一に置く我が政権による努力と食い違うと述べました。中国とロシアへの贈り物だと。

 下院と上院はどちらも、大統領からの拒否権を無視するに十分に大きな差で法案を可決しました。トランプは過去に8件の法案に拒否権を行使しましたが、法律がトランプの署名なしに法律となるために、両院で3分の2の支持者を得られなかったためにこれらの拒否権は維持されました。

 拒否権行使に先立ち、ケンタッキー州選出の共和党議員、上院多数党院内総務ミッチ・マッコーネル(Mitch McConnell)は、法案は中国の攻撃的行動を抑止するのに役立つと言っています。第二位の上院指導者でサウスダコタ州選出のジョン・テューン上院議員(Sen. John Thune)と、下院軍事委員会のメンバーでウィスコンシン州選出のマイク・ギャラガー下院議員(Rep. Mike Gallagher)を含めた法案のその他の共和党の支持者は、法案は中国のよいな国からの脅威に対抗するとツイートしています。

 上院軍事委員会でトップの民主党議員、ロードアイランド州選出のジャック・リード上院議員(Sen. Jack Reed)は、国防法案に関して中国が最大の勝者だというトランプの宣言は虚偽だといいました。リード議員はトランプが拒否権のために行った説明の変化も指摘しました。

 「トランプ大統領は明らかに法案を読んでいないか、それが何かを理解していないのです」とリード議員はいいました。「これには、トランプ政権がかつてなしたよりも中国に対して厳しい、いくつもの党派を問わない条項があります」。

 法案は国防総省の政策を導き、兵士レベル、新兵器システムと軍の準備態勢、軍隊の人事方針とその他の軍隊の目標の判定を強固にします。多くの計画は軍隊の建設を含めて法案が承認されないと有効になれません。

 トランプと珍しくつながりを断ったマッコーネルはトランプが拒否権を行使すると脅したものの、法案の可決を促しました。マッコーネルは議会は60年間近く続く国防法案の可決を続けることが重要だといいました。

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 トランプが拒否権を行使しても、十分な賛成数が得られているので、議会が再可決して国防法案は承認される見込みです。特に、軍人の昇給が含まれているので、それを無視することはありません。その他の重要な事柄も含まれています。

 そんな中に、自分が気に入らないソーシャルメディア企業に制限を与えるよう迫るなんて、大統領のすることではありません。CNNでは、連日、大統領が自分のために政治をしていると批判していますが、そのとおりです。

 中国が勝者だというのも、自分の意見をもっともらしく見せるための方便に過ぎません。誰もが否定しにくい事柄を持ち出して、自分の意見を通すやり方はよく使われるものです。この拒否権はトランプ政権が死に体であることをさらに強調するだけです。
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2020年12月23日

中露が西太平洋で合同パトロール

 military.comによれば、ロシア軍と中国軍の爆撃機がますます増す緊密なモスクワと北京の間の軍事的つながりを示し、火曜日に西太平洋上で合同パトロール任務を行いました。

 ロシア軍は、同軍のTu-95戦略爆撃機2機と中国軍のH-6K爆撃機が日本海と東シナ海上空を飛んだといいました。

 ロシア国防省は声明で、合同任務は包括的なロシア・中国のパートナーシップを発展させ、深めることを意図しており、さらに2つの軍の間の協力レベルを増加させ、共同行動の能力を拡大し、戦略的安定を強化するといいました。

 国防省はパトロール飛行は「いかなる第3国にも向けられていなかった」とつけ加えました。

 火曜日の任務は2019年7月のパトロール以来、同じ地域上空における2度目の同種の飛行でした。

  飛行はアメリカと彼らの関係の緊張が増す中で、モスクワと北京の間の軍事協力を深める兆しである、将来の露中軍事同盟を排除できないという、ロシアのウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)の10月の声明に引き続きます。(関連記事はこちら

 それまで、ロシアと中国は「戦略的パートナーシップ」を歓迎していましたが、軍事同盟を形成する可能性についていかなる対話も否定しました。

 プーチンは10月に、ロシアは高度な機密の軍事技術を中国と共有し、それはロシアの国防能力を大きく強化するのを助けたとも指摘しました。

 ロシアは西側との関係がモスクワによるウクライナのクリミア半島の併合、2016年の米大統領選挙へのロシアの介入の告発などをめぐり、冷戦後の低い位置へ落ち込んだことから中国とのより強力なつながりを模索しています。

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 日本ではまったく意識されていませんが、このプーチンの発言は日本にとってはとても嫌な内容です。

 中国とロシアは国連の常任理事国です。その立場上、容易に戦争を始めることはできず、両国と隣国とする日本には大きな抑止となっています。いま、国内で語られる中国脅威論はこの事実を無視しています。しかし、この2カ国が「国連はいらない。中露でなんでもできる」と判断する状況が生まれたら、日本の隣に大きな脅威が突然出現することになります。

 だから中露が軍事的つながりを深めることに日本は神経質になるべきなのに、まったく関知していません。かわりに無用な中国脅威論が吹き荒れています。

 今回のパトロール任務も、まだ回数が少なく、儀礼的なものといえますが、緊張がさらに高まると飛行の回数が増え、戦闘機によるパトロール任務に変わるかもしれません。それでも、日本に着上陸侵攻をしなければならないような可能性は小さく、占領まで行かなくても、空爆や巡航・弾道ミサイルなどによる武力を用いた威圧が行われる可能性も大きくはないでしょう。それでも、緊張のレベルが上がる可能性を無視するべきではありません。
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2020年12月21日

元軍人がすぐに国防長官になれないのはなぜ?

 なぜ元軍人は国防長官になるまでに何年も待たなければならないのか?。military.comがその歴史的背景を解説しました。

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 誰に聞いても、次期大統領のジョー・バイデン(Joe Biden)が国防総省を率いるために選んだ退役陸軍大将ロイド・オースティン(Gen. Lloyd Austin)は、国防長官になるにとてもふさわしい。四つ星の将軍になり、40年間の軍歴のいたるところで成功した男、オースティンは半世紀近くを国に奉仕しつつ、武勇と度胸を示しました。

 しかし皮肉にも、オースティンの長すぎる軍歴は承認プロセスで障害を作っています。法律は国防長官の民間人の役割を握る前に、隊員が少なくとも7年間は制服を脱ぐことを必要条件とします。

 わずか4年前に陸軍を去ったオースティンは、法律上はこの地位に就く資格がありません。議会は彼を承認するために待機期間の適用を控えなければならず、それは1947年以降2回、最も近くでは2017年に行われています。

 オースティンの指名は歴史的出来事です。彼は国防総省の大半が白人男性の指揮階級の拡大に向けたステップとして、この国の軍事組織を率いる最初のアフリカ系アメリカ人となります。

 しかし、オースティンの多彩な軍隊経験が彼の明るい未来に暗い影を落とす事実は、なにより、なぜ7年間の遅延が存在するのかという疑問を投げかけます。

軍隊は民間人が統制するもの

 公式の法的な遅延は第2次世界大戦終了時に遡りますが、そのコンセントはこの国の起源を思い起こさせ、米軍の伝統の中心に横たわります。

 建国者たちは帝国が常備軍を用いるのを自ら経験し、そのために、巨大な軍隊を独裁主義の特質であり、民主主義への切り離せない脅威とみなしました。彼らは将軍の用兵に関する支配力は、国民に直接説明する責任がある公人に常に従属しなければならないと信じました。

 サミュエル・アダムズ(Samuel Adams)は1768年に「軍事力が必要なときですら、国土の中では、賢明で、用心深い国民が軍隊について、注意深く、油断のない目を常に持つだろう」と書きました。1776年に、バージニア権利章典は「あらゆる場合で、軍隊は民間の権力の下に従属し、統治されるべきである」と断言しました。この文書は独立宣言の着想に、後に権利章典のモデルになりました。

 憲法のことになると、建国者たちは、軍隊の規則と予算を設定する権力を与え、大統領に最高指揮官の役割を割り当てることで、明確に軍隊の民間人の統治を規定しました。

 第2次世界大戦の結果として、より大きな自治権が戦いの英雄的な指揮官に与えられるべきだという主張が受け入れられて、議会はアメリカの大衆がますますダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)のようなカリスマ性のある将軍の魅力の虜になるのを懸念しました。マッカーサーの考えでは、力量を証明した戦士の特権は、戦争を何も知らない民間人によってチェックされるべきではありません。

 議会は同意せず、新しく創設された国防総省を運営する資格に軍当局者のキャリアを制限する待機期間を設けました。在職10年間の間隙は後に7年間に縮められましたが、将軍の階級を受け入れられるレベルへ弱め、国民への影響を軽減します。

 多くの国防長官は退役軍人ですが、チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)のように、キャリアをもつ兵士という訳ではありませんでした。彼はバラク・オバマ大統領(President Barack Obama)のために2013年から2015年まで国防総省を率いる数十年前 、1967年と1968年にベトナム戦争の兵士でした。その他は学者、政治家と1947年に最初に国防長官に指名されたジェームズ・フォレスタル(James Forrestal)のようなビジネスや産業界の指導者でした。彼は政府に加わる前はウォール街で働いていました。

 彼らのリーダーシップの技術と経験は、少なくとも軍隊の中と同じくらい外で磨かれました。

民間社会から切り離された特別な社会

 州陸軍の少佐として、私はキャリアがある軍将校の精神構造に通じています。

 軍の法律家としての約20年間に、私は上級将校が上官に任務を達成できなかったと聞いたことがありません。大佐や将軍の心の中に、統制のとれた兵士のグループ、賢明な戦術と豊富な資金と装備の補給と共に成し遂げられないことは、文字通りありません。

 このなせば成るという態度はキャリアがある将校の精神構造の一部ですが、それは反対意見に対するかなりの程度の不寛容なのです。軍隊の管理の基本的前提は指揮の統一と権威の一本化です。上級将校は典型的に反対の見解や合意形成を少ししか我慢しません。考え方の多様性は褒められず、大多数と異なる視点は歓迎されません。

 最高裁が述べているとおり、「軍隊は、不可避的に、民間社会から切り離された特別な社会である」のです。それは長い歴史の間にそれ自体の法律と伝統を発展してきている機関であり、結局は「法律とは服従のこと」だという組織です。

オースティンは三度目の適用除外を受けられるか?

 ジョージ・マーシャル退役大将(Gen. George Marshall)は1950年に待機期間の最初の適用除外を受けました。マーシャルは指名プロセスの間に率直な意見を述べました。「少尉のときの私は、兵士が軍務長官でない限り、我々は陸軍の中では決して成功しないと考えました。私が少し歳をとり、我が軍の歴史を通じて奉仕すると、私は彼は決して兵士であるべきでないという修正した結論に達しました」。

 朝鮮戦争で米軍を監督するには比類ない資格を持つと考えられたマーシャルは、最後に彼の在職期間は1年間に限定されるとの条件で承認されました。議会は当時、「軍人のその職へのさらなる指名は承認されるべきではない」と述べました。

 2017年にジェームズ・マティス退役大将(Gen. James Mattis)に2番目の適用除外が承認されるには約70年間かかりました。マティスは4年前に海兵隊を去ったばかりだったので、彼の承認はすぐに上院議員、特に民主党議員からの抵抗にあいました。マティスを承認するために渋々投票する中で、上院軍事委員会のロードアイランド州選出の民主党議員、ジャック・リード上院議員(Sen. Jack Reed)は、「法律の適用除外は同世代に1回より多く起きるべきではない」と警告しました。

 オースティンはいま、3番目の適用除外の受取人になる用意ができています。彼は現役を去ってからの民間の思考様式を身につけていると公言しますが、基礎となる根拠、待機期間は相変わらず重要で、問題に直結するままです。

 「陸軍は議論のための組織ではない」と最高裁はかつて述べました。

 この組織のキャリアを持つメンバーへ、アメリカ人の血と富をどう費やすかを決める権限を与えることは、規則ではなく特例であるべきです。

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これはとても参考になる記事です。

アメリカとは真逆の歴史を持つ日本は、かつては侍が政治を司り、明治維新以降も、軍人が政治に口を出してきました。そのため、軍人が政治に関与することに対する抵抗感がアメリカ人よりも弱いのです。これはとても重要です。

 コロナ対応でも、アメリカでは米軍が対応を主導すべきでないという意見が大半です。日本では規模は小さいものの、自衛隊の対応に対する抵抗は聞かれません。

 国を守るべき存在だが、警戒も必要と考えるアメリカと、平和国家といいながら自衛隊を容認する傾向が高まる日本では、軍隊が民間生活に介入する危険性は、日本の方が高いといえます。
posted by スパイク通信員 at 15:25| Comment(0) | 日記