2021年05月17日

米宇宙軍将校が軍批判で解任

 military.comによれば、弾道ミサイル発射を探知する任務を負う米宇宙軍部隊の指揮官が、彼の新書を宣伝するポッドキャストの最中のコメントに関して、解任されました。その本はマルクス主義のイデオロギーが米軍の中で普及しつつあると主張します。

 コロラド州、バックリー空軍基地の第11宇宙警戒隊のマシュー・ローマイヤー中佐(Lt Col. Matthew Lohmeier)は、宇宙作戦司令部の指揮官、スティーブン・ホワイティング中将(Lt. Gen. Stephen Whiting)によって、指揮能力の信頼を失ったことで金曜日に彼の持ち場から解任されたと、Military.comは独占的に知りました。

 「この決定は最近のポッドキャストにおいてローマイヤー中佐が行った公のコメント基づきました」と、宇宙軍報道官は電子メイルでいいました。「ホワイティング中将はこれらのコメントが禁止された党派的な政治活動を構成するかについて、司令部主導の調査を開始しています」。

 解任の結果、ローマイヤーの一時的は配置は直ちに明らかではありませんでした。

 今月初期に、宇宙軍に転属させられた元教官で戦闘機パイロットのローマイヤーは、「抑え切れない革命:マルクス主義の制服の目標と米軍の不作為(Irresistible Revolution: Marxism's Goal of Conquest & the Unmaking of the American Military.)」というタイトルの本を自費出版しました。

 「『抑え切れない革命』は、我が軍の内部の基礎レベルでネオ・マルクス主義のアジェンダの影響をみる現役宇宙軍中佐によるタイムリーで大胆な貢献です」と本の解説はいいます。

 先週、ローマイヤーは本を宣伝するために、「Creative Destruction(略称CD)」が主催するポッドキャスト「Information Operation」でL・トッド・ウッド(L. Todd Wood)と話し合いました。彼は大学、メディアと軍隊を含めた連邦機関について話し、左翼の行為をますます採用しているといいました。多様性・一体性訓練(多様性とその一体性)のようなこれらの行為は、今日のアメリカ全土の分裂した風潮の原因だと、彼はいいました。

 指揮官としての視点から、ローマイヤーはいかなる上級指揮官も批判しようとしたり、本の中の兵士の身元を公にしようとはしなかったといいました。むしろ、彼は隊員がいま、「我々の文化にいま影響を与えている」特定の課題と協調するために従わなければならない政策に焦点をあてたといいました。

 ロイド・オースティン国防長官(Defense Secretary Lloyd Austin)について、彼は「私はその人を悪者扱いしませんが、私は彼とすべての隊員にこの課題(多様性と一体性)を明らかにしたいです。それは我々を分断し、我々を団結させません」といいました。

 2月5日にオースティン長官は軍の隊員全員に、軍隊内の過激主義について一日の議論を命じました。この議論の一環として、ローマイヤーは1月6日の議会議事堂での暴動を引用した小冊子を与えられたものの、昨年5月にミネアポリスでの白人警察官が原因のジョージ・フロイド(George Floyd)の死に引き続いて行われた市民の反抗と破壊については言及がなかったと、彼はいいました。

 彼はジョン・カービー報道官(John Kirby)をほのめかすと思われる「国防総省報道官」についても問題視しました。ローマイヤーは、カービーがパイロット不足がますます深刻化する中で「白人パイロットが多すぎます」と言ったと主張しました。

 「その種のメッセージをすでに苦労しているパイロットの部隊に出したいのなら、さらなる保持の問題が起きることがすでに予想されます」と彼はいいました。

 金曜日の声明の中で、カービーは白人パイロットの余剰についてそんなことを言ったことはないと否定し、先週、最初の記者会見の間に出したオースティンのコメントは、多様性のプログラムを増やすことの重要性についてだと指摘しました。

 「本省は勤務を望むあらゆる資格のあるアメリカ人にドアを開いています」と国防長官は5月6日にいいました。「全軍を通じた多様性は力の源です。私たちが守る国の才能と声のすべてを奪うわけにはいきません」。

 ローマイヤーはMilitary.comに、彼は本とその内容を出版することについて、指揮系統、広報部、法律顧問に相談をしたといいました。

 「私は自著が国防総省の出版前・保安評価を受ける選択肢を知らされましたが、それは必要がないとも連絡されました」とローマイヤーは電子メイルでいいました。

 「私の意図は党派的な政治に関与することではありませんでした。私は、国防総省が歴史を通じて名誉をもって行ってきたように、将来、政治的に無党派に戻るかもしれないと期待して、特定の政治イデオロギー(マルクス主義)について本を書いています。

 この本はアマゾン、ローマイヤーのウェブサイトとBarnes & Noble社で入手できます。

 本は今週、アマゾンの「軍事政策」部門で第2位になりました。

現役兵としての本の宣伝

 ローマイヤーはポッドキャストの司会者ウッドに、本の第一章は合衆国の歴史と、人種と差別主義がどう社会と経済力の構造と制度にどう影響するかについての研究、批判的人種理論(critical race theory)が果たす役割を探求するといいました。

 「我々が軍隊で受けている多様性、一体性と公平、訓練はマルクス主義に根ざす批判的人種理論が根本です」とローマイヤーはいい、それは警告としてみられるべきだとつけ足しました。

 ある場面でローマイヤーは、彼の本は政治的ではなく、読者に今日の軍隊の増加している政治問題を警告をしようとしているといい、その一部は彼が直接経験しているといいました。

 国防総省の方針には、現役隊員が政治や政治論に関して、できることとできないことが微細にすべて書かれていると、民間・軍関係と軍事戦略が専門のオースティン(Austin)のテキサス大学のクレメンツ国家安全保障センター(Clements Center for National Security)の上級研究員、ジム・ゴルビー(Jim Golby)はいいました。

 自費出版の場合、国防総省命令1344.10と、制服を着ての政治活動につていの関連するガイドラインが適用されるかもしれません。軍の基準によれば、隊員は見解を自由に述べられるものの、勤務中・勤務外の両方で所属部の基本的価値観を維持することが期待されます。

 「これはかなり広範で、出版を妨げませんが、内容についていくらかの制限を課すかもしれません」とゴルビーは金曜日にいいました。隊員の保安許可や政策に関連したアクセスは通常、秘密保持合意(Non-Disclosure Agreement)や許可リードイン合意に含まれます。

 たとえば、国防総省の出版前・保安評価は、すべての現職・元職および退役した国防総省職員、契約職員と現役や予備役の軍の隊員、国防総省の情報、施設に出入りした者、公に公表するために、適切なオフィスに評価と許可を求めて国防総省の情報を提出してNDAに署名した者に必要です。

 当局によると、作戦上の戦地派遣と戦時体験のフィクションの小説、物語と伝記に含めるために、国防総省の情報は、軍隊、国家安全保障問題や国防総省に重大な懸念の主題に関連するあらゆる作品に含めることができます。

 国防総省の情報は、作戦展開や戦時中の経験に関するフィクション小説、物語、伝記的記述に含まれるように、「軍事的な事柄、国家安全保障の問題、または国防総省にとって重大な懸念がある主題に関連するあらゆる作品を含められる」とされています。

 料理、スポーツ、ガーデニング、工作、芸術のような趣味的な活動に関する事柄は、著者の作品が国防総省と関連がないために、出版前の評価になりそうにありません。

 それでも「何が軍事的な事柄や重大な懸念がある主題かは完全には明確ではなく、外部の研究や個人的な政治的意見ではなく誰かが軍隊での個人的な経験を話している場合にだけ問題になりそうです」とゴルビーはつけ加えました。「繰り返しになりますが、これは機密や重要な情報にアクセスする重要な位置に主に関連しています」。

これ以上、声をあげられない。

 少佐のとき、ローマイヤーは彼が「The Better Mind of Space.」を出版した空軍幕僚大学に入学しました。この書面は地球の静止軌道を超えた宇宙での米軍の役割を探索します。

 ポッドキャスト「Information Operation」で、ローマイヤーは空軍大学の上級航空宇宙研究所で、哲学で2つ目の修士号を手に入れた後にはじまったマルクス主義への不満を述べました。

 「空軍と宇宙軍の上官との交流のすべては、非常に素晴らしいものでした。彼らは部下と部隊の致死性について重視しています」とローマイヤーは34分間のインタビューでいいました。

 しかし、指揮官たちは多様性訓練に参加しなければ監視されるとか、昇進できないかもしれないと恐れているのかもしれません、と彼はいい、リベラルな意見は歓迎されるものの、より保守的な批判されたり黙殺されるとつけ加えました。

 ローマイヤーは兵卒から昇降までの新しいメンバーすべてに、軍隊内で教えられているのをみたら、それは国防総省命令1325.06「軍隊の隊員の間の反体制運動や抗議活動の取り扱い」が概説する定義により過激主義の一形態だから、批判的人種理論を拒否するよう助言しました。

 陸軍退役軍人のゴルビーは、ローマイヤーの下級兵士への助言は、潜在的に良好な秩序と規律や国防総省の多様性と一体性の方針、またはその両方を損なうといいました。

 ローマイヤーはウッドに、彼は本の発売について現役隊員から多くの支援メッセージを受け取っているといいました。

 「ありがとう。君が声をあげたことに感謝する。なぜなら、我々はこれ以上、声をあげられないから」と彼はいいました。

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 ローマイヤーの本は読んでいませんけど、何か勘違いをしている人にもみえます。米軍でマルクス主義が浸透しつつあるなど、到底、信じられません。リベラルな意見が歓迎されるのが軍隊にとって悪いことでしょうか。保守的な意見しか通らない軍隊はミャンマー軍に行き着きます。オースティン長官は白人のパイロットを減らせなどと述べていません。

 ローマイヤーは人種差別に対する対応をマルクス主義と勘違いしているようです。彼の発言には興味はありませんが、米軍が彼をどう裁くのかに興味があります。
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2021年05月10日

書評「あの日、ジュバは戦場だった 自衛隊南スーダン隊員の手記」

 この本は南スーダンに派遣され、首都ジュバでの戦闘を体験した第10次派遣隊の隊員、小山修一氏(退役陸自一佐)による手記です。不覚にも最近まで、この本のことをまったく知りませんでした。遅ればせながらも書評を書きました。
 
 この本は全体的には事実を整理して書こうという意図が感じられ、好著です。つまらないことまで隠したがる自衛隊としては、意外なほど、実情を書いたことには驚かされました。ここでは気になった点を取り上げ、理解を深めたいと思います。

北部方面隊が国際活動を任される訳

東西冷戦構造が崩壊し、ロシアの脅威が薄れ、陸上自衛隊定員の1/4を有する大所帯の北部方面隊に、国際活動の新たな役割が期待されることは、ごく自然な成り行きだった。(p25)

 
 旧ソ連とロシアの脅威は、実は作られたものであったことは、すでに知られています。師団規模で演習ができる演習場が北海道にしかなく、本州の部隊を移動して訓練をするための口実のためにソ連脅威論が作られました。しかし、自衛隊の中ではソ連が脅威だったということになっており、この本はその線で説明しています。これは自衛官の中でも、一つの神話として理解されています。事実、この本の246ページに、部下から「ソ連はもう敵ではない」と報告を受けた統合幕僚会議議長が「それでは困るじゃないか」と答えたという話が載っています。ソ連が敵ではないなら、ソ連脅威論に基づいた装備要求、訓練計画が成り立たなくなるという意味です。日本の脅威論は、実はこういう白けた環境の中で動いています。
 
派遣の是非と交戦規則
 
 南スーダン派遣において、戦闘地域には自衛隊を派遣しないという原則が守られなかったのは、派遣を最初に決めた民主党政権と、それを継続した自公政権の責任です。私は自衛隊を海外に派遣するのには、さまざまな問題があり賛成しません。この本はそこまでは書いていません。それは自分たちの存在意味に関わるからです。
 
 自衛隊は明らかに憲法に違反しており、法律上、憲法に違反しないように見せるため、武器使用は警察と軍隊の中間のような規則になっています。この本で繰り返し述べられているように、そのために、国連部隊の交戦規則を守れないだから、根本的なところで国連部隊に参加する要件を欠いているのです。だから、もともと、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に出すべきではありませんでした。この本は、交戦規則の問題は書きながらも、国連部隊に参加することの是非には触れません。これも自分たちの存在意味に関わるからです。
 
 さらに、「2つの指揮系統『指揮』と『指図』」(p118〜124)で述べられているように、国連と自衛隊には二つの指揮系統があり、派遣隊が国連より自衛隊の命令を上位に置いていた点は言語道断です。完全に国連軍の指揮下に入るのが嫌なら、自衛隊を派遣すべきではありません。

 自衛隊がこういう問題を持つのに、著者が「国連とは個人主義的と各国のご都合主義の集合体のような、バラバラな組織であるように感じられた。(p58)」と批判する感覚は、私には考えられないことです。

文民に戦闘服着用の愚
 
 基地にいる防衛省の官僚は民間人ですが、迷彩服を着用していたとのことです(p46〜47)。

「しかし、国連平和維持軍は原則的に『紛争当事者』の軍隊には該当せず、その構成員は戦闘員には当たらないので、文民職員であっても便宜上の作業服として軍服を着用する文には差し支えない、との日本隊独特の解釈だった。」。


 これは明らかな間違いでした。軍人と誤認されて攻撃を受ける恐れがありますし、支援を求める南スーダン人が自衛官と誤認して近寄る恐れもあります。

誤射がチャラになるという幻想

 「軍法なき自衛隊」(p198〜200)で、自衛隊に軍法がない問題点が指摘されています。

「自衛隊が軍隊であるべきか否かは別問題としても、この点を曖昧なままにしていることのシワ寄せは、すべて現場の隊員に降りかかってきている。このことだけは知って欲しい。」

 
 憲法が特別裁判所を禁止しているために、自衛隊には軍法を設けられず、民間人を誤射した場合、刑法で裁かれることが、自衛隊OBから問題視されています。軍事を知らない刑事裁判の裁判官が自衛官に必要以上の刑罰を与えるのではないかという懸念が出ているのです。だから、憲法を改正すべきだという意見です。
 
 しかし、米軍の場合、誤射については、指揮官の命令が間違っていた場合、その指揮官が厳しく処罰されるのが通例で、命令に従って攻撃を行った兵士は処罰されません。また、下級兵士が現場で誤認して民間人を攻撃したような場合は、戦場のカオスが原因とされ、厳しい処罰はありません。この分野に対する自衛官の理解は有害だといえるほどに間違っています。処罰は階級が高い方に、より重く出ます。憲法を改正して軍事裁判所を作れという意見が元自衛隊幹部から出ていますが、それで処罰が厳しくなるのは、その幹部たちなのです。
 
南スーダンの政治状況

 キール大統領とマシャル副大統領の確実を正確に説明していることは評価できますが、単なる内輪もめと理解しているのは評価できません。キール大統領はある時点から利権の亡者になっていて、マシャル副大統領から出る声明は西欧的な感覚に近く、南スーダンを近代的な国にしたいという意思がみえます。副大統領側からは、ジュバの戦闘はキール大統領がマシャル副大統領を暗殺しようとして起きたとの説明が出ていますが、その点には触れられていません。マシャル副大統領とその軍隊は、徒歩で隣国コンゴまで逃げ、そこで疲弊した状態で国連に保護されました。キール大統領は、その国連の行為を副大統領への肩入れだと非難し、国連は人道的保護だとやり返しました。マシャル副大統領が解任されたところで説明が終わっていますが、彼は復職し、その後、ローマ法王が仲介に入るなどの努力がなされ、現在は大統領と和解しています。
 
政治的発言
 
 第5章に稲田防衛大臣に対して、様々な要望が書き込まれていますが、退役したとはいえ、現役自衛官への見本として、政治的意見を公表することは好ましくありません。大臣にこう言って欲しかったといった意見は明らかに政治への介入です。米軍の隊員は現役中は表現の自由が制限されていますが、退役後も政治的中立を守るべきだという意見もあります。法律上の義務は終わっても、軍隊の政治的中立は国民に対する約束だという考え方があるためです。表現を変えれば同じことがいえたと思える部分もあるのが残念です。

日報問題

 日報問題については、日報が部隊内でどう取り扱われていたかなど、知らないことが多く書かれていたので、非常に参考になりました。日報は隊内で自由に閲覧できたので、そもそも完全な廃棄など不可能だったといった内部事情を明らかにしたことは大きい。自衛隊は何でも秘密にしたがり、国民もそれで普通だと信じています。それが誤りであることは、国民の間に広く知られるべきです。

総括
 
 南スーダンについて、これほど細かく書かれた本はなく、その点では高く評価できます。しかし、自衛官にありがちな誤解は、やはりありました。その点は差し引いて評価しなければなりません。私にとって、この本は自衛隊を戦闘地域に派遣すべきでないという自説をより強化します。
posted by スパイク通信員 at 13:45| Comment(0) | 日記