2021年09月30日

アフガン戦略について米軍高官が証言

 アメリカの軍事誌「military.com」が、米連邦議会での米軍高官の証言について報じました。以下に、私の訳文を掲載し、その後に、私の意見を掲載します。翻訳は部分的に意訳することがあります。原文を読みたい方はリンク先にアクセスしてください。

【記事】

https://www.military.com/daily-news/2021/09/29/us-general-afghan-collapse-rooted-2020-deal-taliban.html

 国防総省高官は水曜日、8月にアフガン政府と政府軍が崩壊したのは、米兵の完全撤退を約束した、2020年のタリバンと米の合意に遡るといいました。

 中央軍指揮官、ケネス・マッケンジー大将(Gen. Kenneth McKenzie)は下院軍事委員会に、9月までに完全撤退するという4月のジョー・バイデン大統領の決定もあって、米兵駐留を2,500人未満にしたことが、アメリカが支援するアフガン政府の崩壊を加速させたといいました。

 「ドーハ合意の署名は、なによりも心理的にひどく有害な効果をアフガニスタン政府とその軍隊に与えましたが、我々はいつ我々が去ろうとしているのかと、いつ彼らがすべての支援が終わると予期するのかについて、明確な日付を設定しました」とマッケンジーはいいました。

 彼はトランプ政権がドーハでタリバンと共に署名した 、アメリカが2021年5月までに兵士を完全に引き揚げることを約束し、タリバンがアメリカとその同盟国の軍隊を攻撃することを止めることを含めたいくつかの条件を約束した 、2020年2月29日の合意に言及しました。表明した目的は、タリバンとの平和的交渉を促進することでしたが、外交的効果はバイデンが1月に大統領になる前、まったく勢いを増しませんでした。

 マッケンジー大将は、彼も長い間、アメリカがアフガニスタンで軍事顧問を2,500人未満に引き下げたら、カブール政府は必然的に崩壊し、軍隊もそれに続くと考えたといいました。彼はさらに、ドーハ合意の士気消耗効果について述べ、4月のバイデン大統領が命令した兵士削減は、我々の顧問が部隊と共にいないので、米軍にアフガン軍の内部の状況を分からなくさせるため、 20年間の戦争の努力にとって、もう一つのとどめとなったといいました。

 ロイド・オースティン国防長官(Defense Secretary Lloyd Austin)はマッケンジーと共に証言し、彼はマッケンジーの分析に同意するといいました。彼は、ドーハ合意はアメリカがタリバンを空爆することも止めると約束したともつけ加えました。「このため、タリバンをはより強くなり、彼らはアフガン軍への攻撃作戦を増やし、週単位で多くの人々を失いました」。

 共和党議員がバイデン大統領がアフガニスタンについて間違っていたように描こうとして、民主党議員が彼らがトランプ時代の無分別な決定と呼ぶものを指摘しようとして、水曜日の公聴会は政治的に非難されました

 統合参謀本部議長、マーク・ミレー大将(Gen. Mark Milley)は前日に上院の同様の公聴会で、アフガニスタンでの戦争は戦略的な誤りだと言っていて、水曜日に繰り返しました。

 ミレー大将は火曜日に質問され、上院委員会に、彼の個人的意見では、カブール政府の崩壊とタリバンの統治への回帰を防ぐために少なくとも2,500人の米兵が必要だったといいました。

 米情報評価を無視して、アフガン政府と、そのアメリカが訓練した軍隊は8月中旬に崩壊し、1996年から2001年にこの国を統治したタリバンがカブールを占領することを許しました。それをミレーは、オートバイに乗った200人が、発砲することなしにと説明しました。それはアメリカの民間人、アフガンの同盟者などをカブール空港から救出する、取り乱したアメリカの活動を引き起こしました。

 今週、下院と上院の公聴会は、戦争とそれに費やされた何千億ドルの税金に対する議会の監視が何年も限定的だった後、アフガニスタンにおけるアメリカの失敗の議会評価を延長することの始まりのようでした。

 「共和党議員のアフガニスタンへの突然の関心は、古くさい政策にあります」と、アメリカの関与を終わらせるバイデンの決断を支持する、マサチューセッツ州の民主党議員、エリザベス・ウォーレン上院議員(Sen. Elizabeth Warren)はいいました。

 共和党議員がバイデンを軍将校からの助言を無視したように描こうとして、彼が春と夏に示した軍隊の選択肢を事実誤認したため、火曜日の公聴会は時たま議論になりました。

 2,461人のアメリカ人の命を奪った戦争の率直な評価において、ミレー大将は、この結果は何年間も進攻していたものだといいました。

 「このような戦争の結果は、戦略的失敗である結果です。敵はカブールで統治しています。他に表現はありません。20年間の積み重なった効果です」と、彼は火曜日にいい、米軍がアフガン軍を米軍のように見えるようにしようとする間違った活動の中で、アフガン人を過度にアメリカ人の技術への依存させたかどうかを含め、教訓が学ばれる必要があるとつけ加えました。

 共和党のトム・コットン上院議員はミレー大将に、なぜ彼の助言が却下された後に辞職しなかったのかを尋ねました。

 ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)によって統合参謀本部議長に指名され、バイデンに慰留されたたミレー大将は、最高指揮官に最善の助言を与えるのが自分の責任だといいました。

 「大統領はその助言に同意する必要はありません」とミレーはいいました。「彼は、我々が将軍だからといってそういう決定をする必要はありません。自分の助言が受け入れられなかっただけで将校が辞職するのは、信じられないような政治的反抗行為です」。

 ミレーは、次の12ヶ月から36ヶ月で、アルカイダやイスラム国のグループのアフガニスタンでの関連団体が、タリバン統治のアフガニスタンで再構成し、アメリカに脅威を及ぼすテロリストを示す「強い現実の可能性」に言及しました。

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【論説】

 これは単に、元大統領のトランプに責任を押しつけようとすることが目的ではなく、長年にわたり、米軍高官が抱いてきた見解が、ようやく語れる時期が来たということです。

 トランプが自分の外交成果にしようとして、アフガンからの撤退を決めたことは知られています。アフガンだけでなく、韓国やドイツに米軍がいることも疑問視するトランプは、何か理由をつけては、米軍を本国に戻したがっていました。なぜ、外国に部隊を置いて、そのために国家予算を費やすのか、トランプは理解できずにいました。経営者時代からそうですが、トランプは自分が損をすることが我慢できないのです。

 トランプがアフガン撤退の流れを作ってしまい、政治的にそれを覆すことは失点になるバイデンがそれを促進したため、アフガン政府と軍の中に、恐怖の連鎖が起きたと考えられます。こういう空気の変化は、報道には表れないから、日本ではつかみにくい。私は、アメリカがその辺はうまくやっているのだろうと思っていましたが、膨れ上がった恐怖は止められず、短時間に政府が崩壊したのでしょう。

 ミレー大将がいう「オートバイに乗った200人が、発砲することなしに」という説明は、軍隊や警察がカブールから逃げ出したことを意味します。日本人には理解しにくいことですが、国によっては、上司が人事異動するだけで動揺するようです。日本で働く外国人労働者が、会社の上司が定期の異動で変わると聞いて、強い不安を抱いたという話を聞いたことがあります。彼の祖国では、それは普通の出来事ではないようです。似たような動揺がアフガニスタンでも起きた可能性があります。

 アルカイダやイスラム国がアフガンで再結成するかは、いまの段階では、私には疑問です。ミレー大将はそれを裏づける情報を持っているのかもしれませんが、タリバンにとって、他のテロ組織はアフガンに必要がありません。部分的な協力関係はあっても、共存するかは疑問です。

 また、日本では、タリバン統治のアフガニスタンは、中国とのつながりを深めると、例によって中国脅威論から来る主張が流れていますが、私はこれには懐疑的です。ロシアはアフガンから麻薬が入ってくることを警戒しています。そのロシアと中国はアフガン国境付近で合同演習を行い、タリバンの影響を防ごうとしています。中国の要人がアフガンを訪問するなど、外交上の動きはありますが、それくらいは普通に起こるものです。タリバンは中国の支援を受けるかもしれませんが、なによりも、自分たちが国をしっかりと統治していることを示さないことには、アフガン国民の協力も得られません。いくらタリバンでも、自分たちが国家となって、どこまでやれるのかは、自ら実証する必要があります。今後、数十年間はそういう活動に奔走することになるでしょう。そして、国を治める能力がないと実証された時には、また、新しい政変が起きるのかもしれません。それは誰にも予測できないことです。

 中国とタリバンが結束したところで、日本に直接的な影響はありません。単に、中国を警戒する心理から脅威が増幅しているだけです。それはアフリカ諸国に中国が突き刺さっていることから来る警戒感です。しかし、アフリカと違い、アフガンには資源らしいものがありません。警戒しても、大した意味はないということになります。
posted by スパイク通信員 at 16:56| Comment(0) | 日記
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