2022年03月03日

ロシア軍によるウクライナ侵攻の評価

 多忙のためウクライナ危機について、ここには投稿がほとんどできませんでした。フェイスブックを中心に投稿しているので、そちらをご覧下さい。ここにこれまでのところの状況について書きたいと思います。

 首都キエフ市が陥落するかどうかは正直なところ分かりません。両軍の損失については色々な情報が出ています。報道記事や両政府当局からの発表は目にしていますが、情報には誤りがつき物で、状況を有利に見せるために流される偽情報もあります。また、ロシア軍のキエフ攻撃は市街地の西方と北方から行われることが予想されます。北東部からキエフに接近するルートは、現段階ではウクライナ軍が守っており、ロシア軍は通過できません。この西方と北方からキエフに接近する部隊の総数が明確ではありません。大軍が向かっていて、車列が渋滞を引き起こしていることが明らかですが、その具体的な内容までは分かりません。キエフ攻撃を開始する地点へどれだけの部隊が集結しているのかは分かりません。従って、キエフ攻撃に十分な兵力が集中できているのかがつかめないのです。

 考えられるキエフ攻撃は、砲兵による徹底的な砲撃を行い、その後に前進して地域を占領し、さらに砲撃でその先を徹底的に破壊して、地上部隊が前進するのを繰り返すことになるでしょう。しかし、瓦礫の合間からウクライナ兵が車両に向けて発砲を行い、損害を与えるはずです。キエフには地下鉄があり、下水道もあります。そうした地下に隠れて砲撃をやり過ごし、終わったら出てきて前進してくるロシア軍をRPGや対戦車ミサイルで迎え撃つことになります。地下移動は市街戦の重要な要素です。

 現地時間3月2日午前6時のウクライナ軍発表によると、「北部方向では、占領軍の最大17個大隊戦術群が、人員と装備の損失にも関わらず、北東からキエフを封鎖するための攻勢作戦を続けます。侵略者はコゼレーツィ(Kozelets)、ボブローヴィツャ(Bobrovytsia)とマキブ(Makiiv)の各地区で阻止されました。」とのこと。コゼレーツィはキエフの外縁部から約54km、ボブローヴィツャは約58kmです(マキブの位置は不明)。これらの防衛戦が崩壊すると、ロシア軍は東からキエフを攻撃できるようになり、キエフ全体を包囲できるかもしれません。こうなると、ウクライナ軍は非常に不利です。1個大隊戦術群は兵数900人とされるので、15,300人が北東部の戦線にいることになります。この兵数は少々少ないとしかいえませんが、他にも増援や未確認の部隊があるかもしれません。

 しかし、キエフが陥落しても、それで戦争は終わりません。ロシア軍には元々ウクライナ全体を支配するための戦力がないのです。米軍の基準では、完全な武力統治を成功させるには住民1,000人あたり20人の兵士が必要だとされます。つまり、住民50人に兵士1人の割合です。ウクライナの人口はウクライナ国家統計局による2021年の数字で4,159万人(クリミアを除く)です。これを単純に50人で割ると831,800人。約83万人がウクライナを占領するために必要な兵数ということになります。これを19万人でやろうというのですから、ベラルーシの兵士を足したところで焼け石に水で、全然足りないことになります。キエフを陥落させても、そこから先は兵士が足りなくなり、地方を占領しようとするたびに反撃を受けることになります。

 しかも、ウクライナ軍は西側が提供した対戦車ミサイルと対空ミサイルを持っています。制空権がとれない中、有効な空爆による支援が行えないため、地上軍の支援は砲兵隊に一任されることになります。占領できるのは一部の大都市だけで、地方都市には手が回りません。こうなると、ウクライナ軍は待ち伏せ攻撃をしては逃げるというゲリラ戦を地道にやるようになります。このような戦いをロシアがいつまで続けられるのかが疑問です。

 ウラジミール・プーチン大統領のような狡猾な人物が、このような無謀な作戦を許可したことも本当に理解できません。最近の発言を見ると、人が変わったように見えます。精神状態が非常に心配です。ウクライナ侵攻が失敗したとすると、ここに全体の75%の戦力を投入したことから、ロシア軍が大打撃を受けたら、戦力を回復するには長期間かける必要が出ます。国家防衛の基盤を破壊するかのような作戦を採用したことは本当に疑問です。
posted by スパイク通信員 at 18:54| Comment(0) | 日記
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