2021年11月06日

ハイテク兵器の時代に近接戦闘に目を向ける米軍

【ハイテク兵器の時代に近接戦闘に目を向ける米軍】
サイバー戦や無人機が取りざたされる今、米軍はごく近い距離での戦闘に注目しています。
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 米陸軍が中東でのゲリラ部隊と戦った数十年から回復する一方で、指揮官たちは未来の戦争に目を向けています。サイバー兵器、無人機と人工知能で急速な進歩があったにも関わらず、彼らは未来の戦争は依然として流血の近接戦闘で特徴づけられるだろうと強調します。
 「さらに、この技術は素晴らしいものですが、市街戦といえば、手榴弾を投げ、それを延々と切り返すかもしれないものです」と、テッド・マーティン中将(Lt. Gen. Ted Martin)は木曜日のインタビューでいいました。
 アメリカは最近のいくつかの戦役をほとんど最新技術がないやり方で過ごしています。それはロシアと中国との紛争においては正しくありません。二人の潜在的な敵対国の軍事プランナーは彼らの準備に集中するまでいます。
 フォート・レブンワース(Fort Leavenworth)の米陸軍統合武器センター(U.S. Army Combined Arms Center)の指揮官であるマーティン中将は、未来の戦争は単に「ボタンを押すもの」にはならず、米地上部隊は素早く接近し、砲兵と航空機を装備して戦いに来る敵を破壊しなければならないだろうといいました。
 速度と機動は敵の武器をかわすために重要で、素早く敵に接近することは、自軍の兵士に命中したり、その他の付帯被害のリスクのために、爆弾を投下することを、彼らにとってさらに難しくします。アフガニスタン戦の日々は過去となるでしょう。その戦いは頻繁に、無線機と稜線から撃ち下ろす簡素なライフル銃を持つタリバン兵士に対抗する土地に建つ粗末な前進作戦基地に兵士を置きました。
 「我々は、航空優勢と制空権を持ち、サイバー兵器が大きな役割ではなかった2003年に我々がやっていた種類の戦いをしようとしていません」とマーティン中将はいいました。「我々が注目するのは、どんな兵器が投入されるのか、彼らのドクトリンは何かや、自由に活動する競合国の能力、人工衛星の使用が長距離から精密に撃つため、彼らに我々に対する監視と潜在的な対象物(米兵)を提供するということです。我々は急速に接近して、破壊する必要があります」。
 2000年代のイラク・アフガニスタン戦のピークの後、国防総省は軍の近代化のための莫大な努力を追求しています。努力の主要な到達点は、未来の主要な紛争が電子グリッド、金融機関、選挙および通信に対する攻撃を含む電子戦に関係があるという予測に鑑みて、宇宙軍の創設でした。
 国防総省のいわゆるサード・オフセット・ストラテジー(Third Offset Strategy)、世代を飛び越えることで軍事技術を前進させる計画は、軍が新技術に集中することになっています。それは人工知能、超音速ミサイルとサイバー戦の能力の技術革新と開発に集中する新しいオフィスを設置することになっています。
 先週の無党派の議会調査局からの議員への報告書は、アメリカは依然として中国とロシアに技術的な優位にあると強調しつつも、競争上の優位は素早く小さくなる可能性があると主張しました。
 「アメリカはこれらの技術の多くの開発でリーダーですが、主要な競争相手の中国とロシアは最新の軍事技術の開発で継続的な前進をしています」と報告書はいいました。「それらは国内外の軍隊に統合され、配備されるため、これらの技術は、議会の検討事項と国際安全保障の未来への大きな影響となりえます」。
 この夏、中国は超音速ミサイルを実験しました。それは国家安全保障のプランナーに、米軍の優位性の潜在的な衰えについて警鐘を鳴らしました。統合参謀本部議長のマーク・ミレー大将(Gen. Mark A. Milley)は水曜日、ブルームバーグにミサイル実験は、冷戦中の宇宙競争に拍車をかけた「スプートニク・モーメント(Sputnik moment)」に非常に近いと、国防総省を驚かせたといいました。
 しかし、大きな違いがあり、陸軍はバランスをとろうとしています。新技術は未来の戦争で主要な要素になりそうですが、陸軍の指揮官たちは伝統的な地上戦闘は未だに主要な役割を果たしていると主張しています。
 「私は同じ会話を聞きます。それは、未来の戦争は、ママの家で地下室に座った奴が誰も彼をもハッキングして、モンスター(エナジードリンク)を飲むことだというのです。私はそれに強く反論します」とジョン・クライン准将(Brig.Gen. John Kline)は木曜日に陸軍のオンラインセミナーの間にいいました。
 混沌とした地上戦闘の準備の一部は、いくつかの主要な戦闘職の基礎訓練を拡大する陸軍の動きでした。昨年、戦車兵と偵察騎兵の訓練がそれぞれ15〜17週間から22週間に拡大されました。その動きが願わくは、主により武器を使う多くの時間を与え、すぐに海外に派遣されるかもしれなかったり、すでに戦場にあって新兵に十分な説明ができない部隊に姿を現させて、兵卒たちをよりよく準備を整えさせるでしょうとマーティンはいいました。
 陸軍は速度を測定するより広範なテストである陸軍戦闘適合性テストでの体力のテスト方法の改良も終えています。しかし、5月にMilitary.comが入手したデータは、来年公式なものになるテストに、女性は合格するために苦労していることを示しました。
 軍は専門職の歩兵と衛生兵がバッジを取得するためのテストの難易度を下げることなく、部隊の負担を軽くする手法にも注目しているところです。これらのバッジを取得する機会が増える副次的効果は、戦闘技術の基本をさらに訓練することだと指揮官たちはいいます。(翻訳は私が作成しました。一部意訳があります)
https://www.military.com/.../army-expects-fierce-close...
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【私見】
 とても興味深い記事だと思います。米軍は常に新しい戦場に対応しようとして、自ら企画を立てて、実験を繰り返し、新しいドクトリンを確立しようとします。日本では、これからはサイバー戦だとか、無人機だと騒いでいますが、米軍はこれまでの戦争の記録を調べ、そこから新しい教訓を導き出そうとします。自衛隊には、こうした戦闘の経験がないために、そもそも、新しい戦場の環境を知りようもありません。そこで、米軍の記録を積極的に調べて、それが日本の防衛にどう応用できるかを研究すべきなのですが、どれだけやっているのでしょうか?。インターネット上にも、かなりの情報は出ていますが、それらを調べているのでしょうか?。
 近接戦闘とは近距離で行われる戦闘のことです。気になるのは、敵が砲爆撃をためらうくらいの距離は歩兵の武器が致命的な効果を発揮する距離でもあるということです。誤爆の恐れがある300メートルくらいからの距離は、歩兵が持つ兵器でも敵の命を奪える距離です。砲爆撃を避けるために敵に近づくということは、敵の武器が効果的に機能する場所に行くということでもあります。
 当然、そんな危険な距離で、どうやって味方の損害を防ぎ、敵に損害を与えるかという戦術、兵器、訓練の方法を考えることになります。その詳細は、この記事には書かれていませんから、どんなものかは想像するしかありません。
 米軍にはそういう作戦に向いた砲弾があります。M982「エクスカリバー」は砲弾にGPSが搭載され、翼がついています。翼を動かして自分でコースを調整し、半数の砲弾が照準点の5〜20メートルの範囲に着弾します。つまり、敵に急速に接近すると、相手は砲弾を撃ち込めなくなるのに対して、米軍は砲撃を続けられるということです。
 しかし、敵から受ける攻撃をどう防ぐのか。隠れている敵をどうやって素早く見つけられるのかといったことは、さらに検討が必要でしょう。敵の砲弾を破壊するレーザー兵器や対戦車ミサイルを迎撃するシステムなどはすでにありますが、さらに研究が必要に思えます。
 なにより困るのは、歩兵をどうやって激しい攻撃から守るかです。大きくて容易に見つかる装甲車や戦車と違い、歩兵は隠密行動ができて、粘り強い戦いができるという利点があります。しかし、攻撃には弱いので、上手に守る必要があります。記事にあるように、谷間に設けられた前哨基地は敵の攻撃に弱く、包囲されると現場は修羅場になります。そういう戦闘を、アフガニスタン戦では何度も見ました。ヘリコプターが対戦車ロケットで撃墜されることもあり、ローテクな兵器が幅を利かせる環境でもあります。そういう戦場をどう戦うのかが、私には疑問です。米軍がどう問題を解決するのかに注目します。
posted by スパイク通信員 at 12:47| Comment(0) | 日記

2021年10月08日

韓国軍のトランスジェンダー兵士の除隊処分を裁判所が却下

 読んでいたら涙が出てしまいました。韓国の男性隊員が性転換手術を受けたために除隊させられ、自殺した事件に関する記事です。

【記事】

 military.comによれば、韓国の裁判所は木曜日、軍が不法にこの国で最初のトランスジェンダーの兵士に対して、進行中の性別適合手術を理由に、除隊させることで差別的待遇をしたとの判決を出しました。自宅で彼女が死亡して発見された7ヶ月後に出た画期的判決です。

 活動報告グループは、大田地方裁判所(Daejeon)は性的マイノリティの権利を前進させたが、彼女を除隊させた陸軍に抵抗したビョン・ホイス(Byun Hui-su)のためには裁判が遅すぎたとも説明しました。

 韓国はトランスジェンダーの人が軍に入ることを禁止していますが、軍務にある間に性別適合手術を受けた人たちをどうするかについて特定の法律はありません。

 2等軍曹で戦車の操縦士のビョンは、陸軍が彼女の手術が解雇の理由になると決定した後、2020年1月に除隊させられました。当時、陸軍は身体的、精神的障害をもつ要員を、それらの問題が戦闘や勤務の結果でなかった場合、除隊させる法律を引き合いに出しました。

 性同一性でうつ病にかかった後、性別適合手術を2019年11月にタイ国で受けていたと言ったビョンは、軍務を続けたいという希望を表明しましたが、軍の委員会は彼女の訴えを却下しました。2020年8月、彼女は軍に対して訴訟を起こし、彼女が今年3月に大田広域市の中心の市で、自宅で亡くなって発見された後、彼女の親族は訴訟を引き継ぎました。

 大田裁判所は、ビョンを除隊させる陸軍の決定は、彼女が男性だったという断定が根拠であるため合法にできないといいました。法廷は、陸軍は彼女を除隊させると決める前に、ビョンが清州地方裁判所に女性として法的身分を変更する届けを出していたことを、すでに知っていたことを指摘しました。彼女が除隊させられた数週間後に、清州裁判所はビョンの請願を許可しました。

 「ビョン・ホイスの件が軍法に定義されるように身体的・精神的障害として解釈されるかどうかを決定する中で、決定は(ビョンが)性転換の後、女性であったという前提に基づくべきであったことは明白です」と大田裁判所は判決申し渡しでいいました。

 「従って、ビョン・ホイスが(彼女の男性器を)喪失したことが身体的・精神的障害だと決定した(陸軍の)決定は、ビョン・ホイスが性転換の後も男性であるとの前提に基づいているもので、疑う余地なく非合法であり、棄却されるべきである」と判決文は述べました。

 ビョンの苦境は、トランスジェンダーの人びととその他の性的マイノリティが頻繁にハラスメント、虐待と差別的待遇に直面し、多数の人がうつ病を戦っている非常に保守的な国の神経を逆なでしました。

 「the Center for Military Human Rights Korea」を含む人権団体の連盟は、判決は性的マイノリティに希望を与え、軍は上訴しないよう求める声明を出しました。

 「ビョン・ホイス2等軍曹は勝訴した今、明るく笑い、同僚の元に戻ったに違いありません。しかし、彼女はすでにこの世にいません」と声明はいいました。「今日の判決は司法の勝利ですが、司法の遅れの痛みを伴う教訓でもあります」。

 記者に送ったテキストのメッセージで、陸軍は裁判所の判決を尊重し、どう対応するかについて包括的な議論を行うといいました。陸軍は上訴するかどうか決めていないといいました。

 ビョンが亡くなった時、国防部長官は弔意を表明しましたが、軍はトランスジェンダーの人びとが軍務につくことを認めるかについて現在は議論をしていないといいました。(翻訳は私が作成しました。意訳が含まれていることがあります)

【私見】

 バイデン大統領は就任直後に、ドナルド・トランプが決めたトランスジェンダーの人が軍務につくために設けた制限を撤廃しましたが、韓国軍はそうではありません。トランスジェンダーの人は軍務につくことができません。

 オバマ大統領は、同性愛者が軍務につけるよう軍法を改正しました。米軍は引き続いてトランスジェンダーの人が軍務につけるよう軍法を変えようとしました。トランプが反対し、トランスジェンダーの入隊には高い障壁が設けられてしまいました。バイデンは選挙公約に、この制限の撤廃を含め、国防長官が指名されると、直ちに実行しました。

 アメリカの軍人向け新聞は韓国軍のことも報じますが、米軍との合同演習の報道が中心で、これほど長い記事は滅多にありません。これは、米軍内で性的マイノリティーの問題への対処が進行中なので、関心が高いことを示しています。記事には「自殺」という言葉が見当たりません。本人の人権に最大限配慮した書き方です。

 トランスジェンダーを認めない韓国軍は、直ちにこの分野での協議を始め、性的マイノリティに配慮した制度を確立して欲しいものです。もっとも、自衛隊はこの問題にまったく対処していないので、他国のことをいうべきではありませんね。

 軍隊は男性中心の社会で、性的マイノリティーについて語ることすら嫌がる傾向があります。世の中には男と女しかおらず、そうでない者はいないという考えが蔓延しています。これを排除しないと、この問題は解決しません。

 この問題は純粋に医療的に捉えられるべきです。ビョン・ホイス2等軍曹は、軍を提訴したものの、それが原因でうつ病を再発させた可能性があります。訴訟のような行動は心理的にはストレスになることがあります。一度、性同一障害でうつ病を経験しているビョン軍曹が再びうつ病になる可能性は低くありません。最初のうつ病の段階で軍の医療部隊が対処するようにしなければなりません。米軍は必要なら軍の健康保険を使って、カウンセリングだけでなく性転換手術も受けられるようにしています。

 こうした改革には政治家の理解が不可欠です。しかし、日本の与党はこの面でも立ち後れていますから、日本で改善が見られるのは、多分、ずっと先の話でしょう。これは本当に苛々させられることです。
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2021年10月04日

タリバンがイスラム国の拠点を襲撃

【記事】

 military.comによれば、イード・ガー・モスク(the Eid Gah mosque)の外の日曜日に起きた爆弾事件は5人の民間人を殺害し、犯行声明はないものの、容疑は直ちにイスラム国グループへ行き着き、8月中旬にカブール(Kabul)を占領して以来のタリバンの敵に対する攻撃が用意されました。

 タリバンはタリバンの報道官、ザビウラ・ムジャヒッド(Zabihullah Mujahid)の母親の逝去を弔うためにモスクに集まりました。

 月曜日の声明で、ムジャヒッドはタリバンの部隊が、カブール北部のカイア・カナ(Khair Khana)近郊のイスラム国の指令センターを急襲したといいました。作戦でイスラム国の武装勢力何人が殺されたか、何人のタリバンが負傷したかはいいませんでした。

 日曜日の爆弾事件は、最後の米兵が8月31日に混乱の中で退去し、タリバンがアフガニスタンを統制してから最も多くが死んだものとなりました。

 イスラム国グループは、大勢の人びとがタリバンの統治を逃れようと空港に入ろうとしたカブール空港の外で169人以上のアフガン人と13人の米兵を殺した8月26日の恐るべき爆弾事件の犯行声明を出しています。

 イスラム国は、2019年に国の東部で彼らに対する米軍の激しい空爆作戦で弱体化された後、2020年にアフガニスタンに再び現れました。彼らは2020年に、新生児を含めた24人を殺した産婦人科病院への恐るべき攻撃の犯人とされました。今年早く、彼らは80人以上の学生を殺した、大半がシーア派教徒のダシュ・エ・バルチ(Dasht-e-Barchi)近郊の学校に対する残虐な攻撃を行った責任をとわれました。

 日曜日の爆弾事件はタリバンに向けた増加しつつある挑戦を強調します。このグループは20年間の武装闘争の間に頻繁な攻撃を行いましたが、今や同じ手法を用いている競合相手の武装勢力の封じ込めに直面しています。さらに、彼らは国内経済の崩壊の中で、彼らが倒したアメリカが支援した政府への多額の外国の支援なしにそれを行っています。(翻訳は私が作成し、一部意訳があります)

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【論説】

 8月にタリバンがアフガニスタンを支配してから、国会議員を含む複数の日本人が、タリバンとイスラム国が結託して、この国がテロリズムの巣窟になるという意見をみてきました。私はその反対の考えです。タリバンとイスラム国は協力する場合もありますが、彼らの約束は我々の常識の中にある約束とは異なり、とても不可解な動きをします。部分的な協力が観測されても、それはイスラムの精神世界の中での出来事です。一貫性のある戦略の中で行われる行動とは違います。

 タリバンにとって、アフガニスタンにイスラム国は不要です。自分たちの民を彼らが殺すなら、タリバンはイスラム国を追い出そうとするでしょう。そうしないと、タリバン統治の下で無辜の民が殺され、国民の中に自分たちに対する反感が生まれます。

 この記事がいうように、タリバンはこれまでとは違います。かつて、一度、アフガンを支配したとはいえ、それは短期間でした。本番はこれからです。彼らがどれだけうまく国家運営をやれるのかは未知数です。

 他にも、中国とロシアがアフガンに接近すると心配する声もありますが、おそらく、その反対の方向に進むと、私は考えます。中国とロシアはアフガンの情勢が自国に影響することを恐れており、それを抑えようとするはずです。不安の声は、実に日本的な懸念に思えます。いつもの心配性が出たという感じです。
posted by スパイク通信員 at 20:34| Comment(0) | 日記